予言と過去
黒い靄のようなものが、10メートルくらい離れた地面に渦巻く。その中心から現れたのは、見た事も無い人だった。
黒い髪、黒い瞳、尖った耳、黒い翼。
「悪魔……っ!」
パパが そう叫んだ時、沢山の黒い渦巻が出来上がり、20人くらいの悪魔が現れた。
「……丁度 良い所に居るじゃねェか。運が無かったなぁ、お前達。」
最初に現れた悪魔が にやりと笑った時。
ママが僕を抱いたまま走り出した。
「え!? 待ってママ!! パパは!?」
ママは僕の問いには答えずに走り続ける。悪魔に囲われたパパの姿は、直ぐに小さくなった。
それでも、必死に視界に捉えたパパの顔は、笑顔だった。
「……リー、ママを、頼むな。」
それが、何を意味しているのか、幼い僕でも解ってしまった。
「パパーーーーーっ!!」
僕が叫んだのと、ママが翼を広げて空を飛んだのは同時だった。
遥か遠く、パパが居る場所から、草の蔓が幾重も立ち上って行った。