予言と過去
「ママが、彼等を引き付けるわ。だから貴方は、音を立てないように気を付けて、太陽に背を向けて走りなさい。そうしたら、お家へ帰れるから。帰ったら お祖父ちゃんに この事を伝えて。」
「ママは? ママは どうなるの?」
ママの優しい笑顔が、ぼやけて見えなくなる。
泣きたくないのに、見ていたいのに、涙が溢れる。
「ママも後から絶対 行くから。」
ママは そう言って、僕を抱き締めた。
「絶対に後ろを振り返っては駄目。リーは良い子だから、約束 守れるよね?」
「……うん……。」
僕が頷くと、ママは ぱっと立ち上がって、走り出した。ママの姿を認めた悪魔達が、大声を上げながら追い掛ける。
僕は草の影に身を隠すようにして、腹這いに前進を始めた。
それから先の事は、良く覚えていない。
兎に角 走って走って……傷だらけ、泥だらけに なりながら村に帰って。
お祖父ちゃんに、泣き付いた。
それから直ぐに捜索隊が出されて。
彼等が持ち帰って来たのは、パパとママの遺体だった。