予言と過去
病院に着くと、受け付けを通った後、お医者さんに1つの部屋に案内された。
小さな明かりが付いた薄暗い部屋。その真ん中には白いベッドが在って。
大きな塊が2つ、転がっていた。
「……即死でした。」
お医者さんが小さな声で囁く。それを聞いた お婆ちゃんが、両手で顔を覆って、その場に頽れた。
私は、ベッドに寝かされている塊に近付く。掛けられていた白い布を そっと捲ると、其処には見慣れた顔が在った。
お父さんと、お母さんの、青白い顔。
それを見た瞬間、漸く実感した。
「……なん、で……?」
答えが返って来ないと解っていながら、問うた。
「……結婚記念日だから、2人だけで出掛けるんだって、言ったじゃん。お菓子 買って来てくれるって、言ったじゃん……。」
お父さんと お母さんの手を、そっと握る。それは冷たくて、硬かった。
「……何で? 何で? 何で置いてったの?」
静かな空間に、私の震えている声だけが響く。その部屋に居た人 全員が、俯いて唇を噛み締めた。
「……何で……っ。」
ベッドに突っ伏して、呻いた。
答えは、返って来なかった。