「好き」が「愛してる」にかわるとき


しばらく見とれていると、その人の口が開いた。



「僕に、何か用?」



あ、やば



「いえ、なにも」



「そっか」



そう言ってまた桜を見始めた。



変な人って思われたかな
あんなに見てたら普通思うよね…
さっさと帰ろ


足を進め、その人の後ろを通りすぎようとしたときだった。



「ねぇ」




顔だけこっちを向いて話しかけられた。




「ここの桜って毎日こんなに綺麗なの?」




そう言って、少し微笑んだ。




「ええ、綺麗ですよ。

ここの桜はずっと綺麗です」



私がそう答えると彼は



「そっか……

昨日も綺麗だったのか…」



と、呟いた。


そのときの彼の瞳が少し哀しそうだったのは、気のせいだろうか。

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