ディスオーダー【短編集】

「……?!」


 この黒い手帳に書かれていることは、どういうことなのだろう?

 途中から日本語で書いているこの人……年数がいつなのか分からないけれど、日付自体だけを見ると……ついこの間、だ。

 エリーお嬢様とやらの執事っぽい人がこの黒い手帳を使っていた時から、最近かもしれないこの日本語の文章まで、どれくらいの年数が経っているんだろう……?

 日付だけを見たら1年ちょっとしか経っていないけれど、はたして、本当にそうなんだろうか……?


 浮かぶ疑問をいったん頭の隅に置いておいて、私はとあることに気付く。──この日本語の内容、今の私と、まったく同じ状況だということに。


 食料も水もなければ、海を渡ろうとしてもまたここへ戻される……だって?


 当初のバカンスに来たような気分は、いつ間にかどこかへと消え失せてしまった。

 もし、ここに書かれていることが本当なら、私はご飯や水を口にすることが出来ず、近いうちに死ぬだろう。


 そして、読んでいくうちに分かった、もうひとつの真実。

 そこまで力もない、頼る人も周りにいない今の私にとって、なんとも残酷なことがこの黒い手帳には綴られていた。


 いや、直接的に綴られていなくとも、これを読めば誰だって理解出来るだろう。

 私は何より、その真実が怖い。

 その真実を受け入れてしまうことが、怖い。



 ……そう。


 ……ここは、無人島だ。



END.
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