ディスオーダー【短編集】
「そのままじゃん!……青い空を見てんの?」

「そんなとこ」

「あ、もしかして白い雲を見てんの?」

「んー」

「動きとか?どっちに向かって動いてんの?」

「あっち」


 さっきから何度も何度もしつこいなぁ。

 僕は嫌いだよ、こんなやつ。


「へぇー」


 いかにも興味なさそうな声で返事をされて、イラってした。

 だったら聞かなきゃいいのに。

 だいたい君、誰なの?
 名乗れよなぁ、まったく。

 ……あ、向こうは僕達が知り合いだと思っているから、名乗るわけがないんだ。

 困ったな。呼ぶ時はなんて呼ぼう。


「なぁ」


 再び話しかけられて、僕はさらにイラっとした。


「楽しい?」

「……は?」


 真っ黒な顔、真っ黒な目、真っ黒な口からはどんな表情をしているのかが分からないために、僕は思わず聞き返してしまった。
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