ディスオーダー【短編集】

 すると、どうだろう。

 ズボンの端から、半袖の袖の端から、煙草に火をつけて燃えていくかのように、ジリジリと燃え爛れ始めたではないか。


「えっ? ……え? えっ?」


 意味が分からず、一心不乱に消そうと手のひらで叩く。

 だけど消えない。

 火の勢いは加速していき、どんどん服を燃やしていく。


「やっ」


 靴の先からも燃え始めた。

 消そうと足踏みをしたり土に擦り付けたりしてみる。

 でもやっぱり消えない。

 言いようのない恐怖に身体中が冷たくなって、だけど熱くて、暑くて、叫びながら走ってみたり水を探してみたりするけど見当たらない。

 ついに服は燃焼し、僕は全裸になってしまった。でもそんなこと気にしていられない。

 火が消えなくて、今度は服ではなく僕の身体を燃やし始めた。

 暑い。熱い。熱い暑い。


「誰かっ、助け……!」


 僕の声は、火が揺らぐ音にかき消されてしまっていた。
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