ディスオーダー【短編集】
5 → 欲望

 アレもちょうだい。

 コレもちょうだい。
 そんなワガママ言っていたら、いつの間にやら僕は独りになっていた。

 みんなが僕を、嘲笑う。


「アレ、ちょうだい」


 僕が指を指したのは、部屋の片隅に置いてある真っ黒い家電。

 否、テレビ。

 リモコンのスイッチを押さなければ、何の役にも立たないだけのテレビ。

 リモコンのスイッチを押さなければ、場所を取るだけのただただ邪魔なテレビ。

 僕の横に立っている白衣を着た濃い化粧の大川さんは、困った様子で顔をしかめた。


「タイチくん、あのテレビは病院のものなの。病院のみんなのものなの。だからタイチくんだけのものには出来ないわ」


 何ヲ言ッテイルノ?
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