ディスオーダー【短編集】
6 → ブランコ
「チヒロ、私ね、」
オレンジ色の夕日が家の中に差し込む午後4時48分。
友達と寄り道をしながら帰ってきた僕は、いつもの帰宅時間より遅くなっていた。
歩き疲れた疲労感を身体全体で感じながら、靴を脱いて廊下へと足を踏み出す。
もともと感じていた疲労感は、安心感から増大して両肩の上にのしかかった。
その刹那だったんだ。
リビングの椅子に、頭を抱え込むようにして座っている母さんが僕に話しかけてきたのは。
「もうダメかもしれないわ」
そして、耳に穴が開くんじゃないかと思うくらいに聞き慣れたその言葉を言われる。
「やっていける自信がないの。疲れたのよ。ねぇ、チヒロ。私、死んでしまいたい……楽になりたい……」
母さんは普段からこんな鬱なことしか言わない。生きていることに疲れたんだって。死んで楽になりたいんだって。
今まで黙って聞いていたけど、もう聞き飽きちゃった。