ディスオーダー【短編集】
14 → 君が代

「暑いなぁ」


 そう言う君のために、少しでも風を感じてほしくてうちわで扇いでいたら、君は溶けてしまった。

 どうやら暑い中で扇いだため、熱い風を吹かせてしまっていたらしい。



「疲れたなぁ」


 そう言う君のために肩をマッサージしてあげたら、君は真っ二つに折れてしまった。

 どうやら力をいれすぎちゃったみたい。
 反省、反省。



「苦しいなぁ」


 そう言う君のためにラクにさせてあげたら、今までの行いのせいもあってか、君は口をきいてくれなくなった。


 今までだって今だって、僕は君のためにしたことなのに、どうしてこうなってしまったんだろう。

 お礼の言葉なんていらない。
 僕はただ、君に笑っていてほしかっただけなのに……。

 ずっとずっと、口をきいてくれない君。

 それでも僕は、君のために何かをしていくんだ。


 何をしても、一生、口をきいてくれないと僕が分かるのは、僕が〝それ〟に気が付くのは、ずいぶんと先の話。



END.
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