ディスオーダー【短編集】

 今日も僕は、空気そのものだ。

 1番背が高くて、目立つはずの僕が、空気そのもの。

 ほんと、おかしな話だよ。


 僕が自分を傷付けて、真っ赤に染まれば、みんなは僕を見てくれるだろうか。

 ……ああ、でも。

 そうすると、母さんは激怒するだろうな。


「こいつ、マジで使わねぇよなぁ」

「なんのためにいるんだろ?」

「使えた試しがないよ」


 家族も、家族以外のみんなも、そう言う。

 そんなの、僕が知りたいよ。


「──いい?! 絶対に自分を傷付けようだなんて思わないで!赤く染まらないで!私より目立つなんて許さないし、〝赤色は私だけ〟で十分なのっ!!!」


 緑兄ちゃんに、桃姉ちゃん。

 紫兄ちゃんに、黄ねえちゃん。

 赤母さんに、青父さん。



 ──そして、白の僕。



 色鉛筆の僕たち家族。



 今日も誰も僕を見ない。

 見ようとさえ、しない。

 今日も僕は、ヒトリキリ。



 僕なんて、生まれてこなければよかったのに。



 僕自身が赤に染まることが許されないのなら。

 僕を生んだやつを、代わりに赤く染めてやろう。

 今から。



 おい。待っとけよ、お前。



END.
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