ディスオーダー【短編集】
18 → 殺し屋さん

 私は殺し屋だ。

 依頼に基づき、人を殺すことを職としている。

 場合によっては無断で殺すことも厭わない。

 だから、誰も私に近付かない。
 近付こうともしない。

 ……まぁ、むやみに近付いてくるようものなら、この銃弾で頭をぶち抜くけれど。


 今日、とある男から殺人の依頼が届いた。

 私は殺し屋だから、その人を殺さねばならない。

 ……それが、いかなる理由であろうとも。


 早速殺してほしい人の名前や特徴を見る。

 ふむふむ。

 なるほど。

 了解した。



 殺してほしい人、というのは。

 まごうことなき、〝私自身〟のことだ。



 依頼者は私を殺してほしいらしい。

 私は迷わず拳銃を持ち、自分のこめかみに銃口を向けた。

 そして、躊躇うことなく、引き金を引く。


 これは、仕事だから。


 だから、私に意見を発する権利もなければ。

 依頼を放棄する権利もない。


 次の瞬間、銃声が鳴り響く。


 殺人依頼、達成。


END.
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