ディスオーダー【短編集】
怖くなってきた私は、さっきよりも激しく、暴れるようにして壁や天井にあたる部分を叩いた。
身体を思い切り揺すり、大きな音を鳴らし、自分がここにいることを誰かに知らせようとした。
しかし、周りに人の気配はない。
すると、次の瞬間、ガコンという機械音に似た音が聞こえた。
手を伸ばしてその音の正体を探ろうと壁に当ててみると、少しずつではあるけれど、壁が動いていることが分かった。
違う面の壁や天井にあたる部分をぺたぺたと触ると、すべて同じように少しずつ動いていることが確認できた。
動いている方向は、自分自身。
──壁や天井は、自分自身に向かって迫ってきている。
それはそう、つまり、自分のいる場所の幅がせまくなってきている……ということ。
「だれかー!だれかー!」
必死に声を荒げるも、やっぱり人の気配はない。
どんどん幅はせばまっていって、それに合わせて身体を丸めていって、呼吸をするのさえ苦しくなってきて──そして、ついに。
耳のすぐそばで鳴るかの如く、ポキッ、と。
自分の中の何かが小さな乾いた音を立てたことが始まりの合図でしポキポキポキポキぽきボキメキボキボキメキメキメキッ、ずちゃずちゃずちゃ、ぐちゃっ。
「おっ、見ろよ。ここに薄型テレビがあるぜ」
「やっぱりテレビは薄型に限るよなぁ。持って帰ろうぜ」
「おう」
急いでブラウン管テレビから薄型テレビに買い替えましょう!
……潰されたくなければ、ね。
「あれ? この薄型テレビ、見掛けのわりに思っていた以上に重いな……!」
END.