ディスオーダー【短編集】
「ちょっ……ユミコ!アンタ、水槽からでて大丈夫なわ……け……ぐぇっ……うぇぇぇ……」
怒りに身を任せて水槽から出た私は、このあと自分の身がどうなるのかだなんて考えもしないまま、一直線に彼女らのもとへ行こうとズルズルと這いずり寄る。
水槽から出た私の身体は、ドロドロになって溶け始めた。
空気に触れて、身体が耐えられなくなった結果だろう。
……でも、もう、とめられない。
自分自身をとめるつもりも、ない。
そんなドロドロと溶けていく私を見て(気持ち悪い)とでも思ったのか、彼女らはその場で嘔吐した。
うわ、キモチワル。
彼女らの方がよっぽどキモチワルイじゃんね?
そんなふうに思ったことを悟られないよう、私は無表情を装って顔を蒼白させている彼女らのもとへと這いずり寄った。
「くんな!くんなって……!いやぁ……っ!」
「私、知ってた」
水槽の中の口が言う。
「耳、泣いていた。『もう嫌だ』って泣いていた。だから……」
私の手が、彼女らのうちの1人の首に触れた。