ディスオーダー【短編集】
29 → 娘の日記帳
──娘のマナが、自殺した。
あの子にはユキくんという同い年の恋人がいたのだけれど、信号機の不具合による交通事故によって命をおとして以来、マナは人が変わったようにおかしくなってしまった。
……と、いうのも、もともと自分にさえ興味がなく、口が悪いながらも大人しい子だったのに、ユキくんが死んでしまって以来、笑顔が増えたというか……明るく、人に優しくなったというか。
今までのマナとは、まったく真逆の性格になったのだ。
ユキくんには申し訳ないけれど、不慮の事故が起きたというのにほぼ無傷で生きていてくれたことはとても嬉しいし、良い性格になってくれたことに対しても、それが悪いことじゃないのは分かっている。
母としても、大人しいよりは明るい性格の方がいいとは思うけれど、本当に……本当に人が変わったようになってしまって、それは──そうね、思わず不気味だと思わずにはいられなくなるほど。
……それでも、不気味すぎるほど性格が変わってしまったとしても、やっぱり自分の娘の死は悲しいし、つらい。しかもそれが、自殺だなんて……。
明るく、人に優しくなったマナが、どうしていきなり自殺したのか……それだけがどうしても分からない。
ユキくんが死んでしまってからマナの口から〝ユキくん〟の名前は一切出なかったけれど、あの日の交通事故から……ユキくんの死が起きてから変わってしまったのは、事実。それが原因で、マナは自殺をしたのかもしれない……?
亡くなったマナの部屋の遺品整理をしていたら、机の中から比較的に新しい1冊のノートが出てきた。
パラパラとめくってみると、それはどうやら日記帳のようで……。
マナが自殺した理由が分かるかもしれないと思った私は、意を決してゆっくりとページをめくったのだった。