こちら、なんでも屋でございます【2】
「せんせー!さよおなら~!」
「あら、マキちゃんさよおなら」
「ねぇねぇ!先生!!今日ねマキのお母さんの退院の日なの!だからマキね、お父さんとお姉ちゃんと一緒にお迎えに行くの!」
「あら、そうなの~。じゃあ早く帰って宿題しなきゃね?」
「うんっ!!」
私のクラスの生徒である高木マキちゃんは去年の春にお母さんが病気で倒れてそれからはお父さんとお姉ちゃんの三人暮らしになっている。
お母さんが先日手術をし、病気が完治したという報告が入り、今日退院なんだそうだ。
だから今日は朝からご機嫌がよかったのだろう。
私はマキちゃんに手を振る。
それをみたマキちゃんは笑顔で振り返してきた。
「ふふっ………可愛いわね」
クラスの中でも皆の中心に居るマキちゃん。
お母さんが倒れた時も逆にお父さんやお姉ちゃんを励ましたとか。
出来のいい子ね。
「岡田先生~、お電話ですよ~」
「あ、はーい!」
急いで職員室へ向かう。
校門から職員室までは走れば10秒程。
「!?」
走り出そうとした瞬間、一瞬黒ずくめの人が横目で見えた気がした。
「…気のせいかしら」
しかし、周りを見渡しても黒ずくめの人なんていない。
私は気のせいとしておさめた。