14歳、掲示物での恋。



一つの掲示物の隅に文字がかかれていた。
私が座ったところから目線をあげると目の前にあるその文字に近付いて目を細めて見る。



ーー“Sが2年の女子に告られた!”

大スクープだとでも言いたげなのに、誰にも気づかれまいとするその細くてか弱い文字に馬鹿馬鹿しいと言う意味を込めて「はぁ」と短くため息をついた。

こんな子ども染みたことをするのは、あのグループしかいない。
掲示物にかかれていたSの所属している、あの三年生のグループ。


そして、その告白した二年の女子というのは、私の小学生の頃からの友人だ。
「はぁ」
また一つ、短いため息が出る。
友人の一世一代の告白を侮辱されたような、そんな気分。
胸糞が悪いというのは、こういう時に使うものなのだと一つ勉強になった。

けれど、いくら勉強になったとはいえ、感謝はない。



その文字を無視して、今回の勉強にとりかかる。
カツカツと滑るシャープペンシル。
問題文を追う目に、目の前にある文字が邪魔をしてくる。


ーー“Sが二年の女子に告られた!”

その文字が迫ってくる。そんな妄想に駆られながら、問題を解いていく。
消えて、その文字。と、願うものの、夢じゃないこの現実世界、文字がひとりでに消えるなんてことはない。


迷ったあげく、その文字を消して、私はその上に文字を書いた。
ーー“こういうこと書くなんてサイテーです”
書いた途端に心がスーッと晴れていくのを感じた。
学校でも目立つあのグループに直接言える勇気なんてどこにもない。
けれど、文字は怖いもの知らずで、私が頭に並べた丁寧な言葉を本能がかき消して行く。

サイテーなんて言葉、あのグループに使うなんてご法度のこと。
でも、心は晴れた。それで良い。


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