14歳、掲示物での恋。
次の塾の日のこと。
塾講師はまた同じ席に私を座らせた。
前回のことを思い出すと、あの文字を誰かが見たかもしれないという不安に襲われる。
席について真っ先にしようと思ったのは、私の書いたあの文字を消すこと。
字というのは人それぞれ違う。
私だとバレる確立はかなり高い。そう思ったから、筆箱から消しゴムを出して、掲示物に向かう。
その手が止まったーー
ーー“本当のこと書いただけ”
また、あの字。
右肩上がりの決して綺麗とは言えない字を見つめた。
また胸糞が悪くなる。
なんだ、それ。と、声に出して言いたくなったのを堪えて、その文字を消した。
ーー“書いていいことと悪いことがあると思いますけど”
挑発的だな、と、自分でも思う。
けれど、私の手は止まることを知らない。
思考と理性より先に、本能が動く。
友人を庇うというよりは、もうほとんど意固地になっていただろう。
暑すぎるほどの暖房と、暑苦しい程いる生徒の中、汗をかいているのに手が尋常じゃないほど冷たいなんて私くらいだろう。