14歳、掲示物での恋。



それからというもの、塾に行くたびに新しく書かれる掲示物の隅に、私以外の文字。
そして消しては書くを繰り返す私とあの人の文字。



ーー“俺も理解不能”
ーー“友人の気持ちも考えて下さい”
ーー“受験の息抜きだよ”
ーー“ありえない”
ーー“一年後、君にも分かる”
ーー“分かってたまるか!”
ーー“明日は私立入試。受かるかな”
ーー“人を侮辱するような人が受かるとは思えません”
ーー“受かったよ”
ーー“おめでとうございます。公立試験も頑張って”



たった一行のやりとり。
掲示物には、毎回たった一行しか書かれていないのに、私の頭の中に文字が増えていく。
初めは、友人が侮辱された気がして許せなかっただけだった。
それなのに今は、週二回、たった一行の文字を待っている自分がいる。

人の気持ちは時間が経てば変わる。ーーまさにその通りとしか言いようがない。
あんなに胸糞が悪かったあの人の文字と思考を、今は何とも思っていない。
週二回という適度な距離が、頭を冷静にさせる。
お互い貶し合うことはもうなかった。



3月7日、公立受験が終わると、三年生は塾にもう来なくなった。



< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop