ジュンアイは、簡単じゃない。
足場になりそうな幹の分かれ目に、思いきり…足を伸ばす。
おてんばだった私には、木登りなどお手の物…だったはずだが……
考えてみれば、それも昔の話……。
腕の力で…何とか身体を持ち上げるが、思いの外手間取った。
「……………。」
ゴツゴツとした木肌に、膝小僧を少し…擦って。
久々に、すり傷などこしらえてみた。
じわりと、血が滲んできて。
気が滅入りそうだった。
腰を降ろして……、
そうっと……下を見下ろす。
見えたのは……憧れの彼の、アタマの…登頂部。
地上にいたら、まず拝めない貴重な箇所である。
『こんな至近距離で、拝めるだなんて……。』
天才の頭に向かって、取り敢えず…合掌する。
「………ん……?」
その頭が。
こくり、こくりと……上下している。
『もしかして……寝てる…?』
そんな無防備な姿など…初めてだった。
いつも隙などなくて、完全無欠な、瀬名広斗が……!
好奇心が…くすぐられ、
どうにも、その顔が見たくなって。
当初の目的をよそに…ついに、身を乗り出す。
変態モード…まっしぐら!
『………もう少し…!』
身体をさらに傾けたその瞬間…、
ビリ……!
……と、そんな不吉な音が耳に届いて。
慌てて上体を起こそうとしたのが…仇となった。
「…………!」
見事にバランスを崩した身体は、そのまま……持ち直す術を失って。
…………真っ逆さま…!!!