ジュンアイは、簡単じゃない。
「いったあ~……。」
ゆっくりと……身体を起こして。
目を開けた…すくそこには。
「…………うひゃっ?」
セナくんの顔の…どアップ!!
「「………………。」」
しばしお互いに…凝視して。
フリーズすること…数秒間。
「……ぎゃっ……!!」
彼の手によって…
私の身体は、弾き飛ばされる。
芝生に横たわって…、唖然とする私と。
まだ、状況を把握していないセナくんの驚いた表情と。
訳の分からない事態に……
時折視線を絡ませながら、警戒し合う…私たち。
二人の間に、ビュウっと風が吹き抜けて。
セナくんの頭の上に……白い物体がコツリとぶつかる。
地面へと落ちたそれを…彼はついに…、拾い上げた。
恐れていた…、最悪な事態。
「…………だ…、だめえ~っ!!」
紙を広げ、セナくんがそれに視線を落としたその瞬間に。
私は叫び声を上げて……
ダーイブ!!
ビリっと…紙が破け、私の手元と、セナくんの手元に……
紙が分かれた。
私が持っている用紙には…
目もあてられないような、散々な点数と、私の名前とが……書かれてある。
『……よかった…、間に合った!』
安心したのも…つかの間。
セナくんは、自分が持つ用紙をまじまじと見つめて。
「……32点。」
そんな爆弾を…落とす。
「…………………何故それを……!」
「こっちの答案に、一問も正解がない。採点の傾向を考えると…、基礎問題の数問の正解で、……32点。」
「………………!」
恐るべし…、天才!
そこまで分析できるのか…!!
「…………。これ…、アンタの?」
「………………。」
さて……。どう言い逃れようか……?
「………ち…、違います!」
「………。『金築ゆな』。」
「………え。な…、何で名前を………。」
「さっき見えたから。」
「………?………あ!……ちょっ…、見たんだったら最初に言えばいいじゃない!」
結局見られてたのか!
あの一瞬で名前まで記憶してるだなんて…。
ああ……。
とんだ……恥さらしだった。
「どうでもいいから、早くそこ退けて。」
「どうでも良いからって、あのねえ……!…て、え…?」
夢中になって気づかずにいたけれど。
なんと現在の私の所在地………、
瀬名広斗の…膝を割ったその間…………!!!
「……ご、ごめん!!…なさい。」
なんとまあ大胆なことを…!
急激に恥ずかしくなって、すぐさま彼との距離を測ると……。
ごくりと息をのんで、後ろ向きのまま……
謝った。
「………………。」
ぽいっと頭に何かが当たって……、
ゆっくりと、振り返る。
「……………。」
すぐ側に落ちていたのは。
モモちゃんのそれと同じように丸められた……
答案用紙。