ジュンアイは、簡単じゃない。
「…………おい。」
「……………。」
「……………オイ!」
「~………っ何よ?!まだ何か用?」
「………。用はないけど、これ以上恥さらすのもどうかと。」
「はあ~?!」
「それ、何とかしたら?」
セナくん……、もとい!瀬名広斗は、私を…指差す。
「………?」
「後ろ。」
「……?後ろ?」
くるりと…回れ右。
「…………。スカート。」
「……スカート?」
今度は顔だけ後ろに向いて、スカートを…手探りすると。
「………おや……?」
太もも部分が…スカスカしている……?
「妄想相手見せる勝負パンツか。……大胆だな。」
「……き………キャアア~~!!!!!」
頭の中で……不吉な音が、甦って来る。
木の上……。
ビリっと裂けるような…あの音は……
スカートが破れた音……??!
「………さ……最悪だ……。」
よりにもよって。
本日のパンツは…真っ赤なパンツ!!
金太郎…、ここに……降臨?!
セナくんは、一切表情を崩すことなく。
すたすたと……先を歩いていく。
「どうしよう………。てか、こんな状態の乙女を置いてきぼりにするなんて…、どれだけ冷たいのよ。」
女子高生のパンツに、顔色ひとつ変えないだなんて…!!健康な高校男児にあり得るの?
益々自信が…なくなるよ。
真っ赤なパンツ……
まさに…、赤っ恥!!
「そうだ……、モモちゃんに…電話!」
でも……授業中…。
「……………。」
遥か向こうに。
セナくんの……後ろ姿。
あんなヤツに頼むのは癪だけど…、
しょうがないじゃない…。
恥を偲んで、
「……セナくん!!!」
思いきり…叫んだ。
「…………セナくん!!」
彼は、二度目の声で。
ようやく、ピタリと……足を止める。
「…………。ごめん、助けて。」
「………なに?聞こえない。」
最高に……意地悪な人。
「……ごめん、助けて!!」
だけど……、
「馬鹿丸出し。」
戻ってきた彼は、自分が着ていたジャージを脱いで。
ぽいっと…こっちに投げこんだ。
「……腰に巻けば見えなくなる。」
だけど……。
完全に血が通ってないわけでは…なさだそうだ。
夢のように、私に微笑みかけて来ることはないけれど。
あれはきっと……こんな出会いの、予兆だったのかもしれない。