ジュンアイは、簡単じゃない。
「お前らよっぽど鬱憤がたまってるんだなあ……。」
「「…………。」」
3階職員室…。
担任の菊地先生と、先程の塚本先生の前に立たされているのは……
私と、
何故か……
力。
「きん、お前朝から何やらかしたんだよ。」
「……。そっちこそ…。」
「俺はあれだ、昨日の紙飛行機が見つかって…
」
あ……。
そういえば力のだけ…回収し忘れてた。
「何こそこそしてる!」
「「いえ、なんでも。」」
「だいたい、金築!ジャージ登校は違反だろう。」
「あ、それはですね…。」
「昨日は世界史の授業にもでなかったそうだな?」
「……………。……はい。」
「受験生なのに、自ら内申下げるような行動をとってどうするんだ?大学、受ける気あるのか!」
「……………。」
大学……。
「お仲間の古山は、成績も若干だが上がって来てるぞ。お前らこのままじゃ本当に…置いていかれるからな。」
「「……………。」」
言い返す…言葉もなかった。
そう言われてみれば、赤い点数の私達と。
そうじゃないモモちゃんとは……
少しずつ、その差が……開いてきている。
英単語の勉強だって、そもそも…モモちゃんが気まぐれで言い出したものだと思っていた。
いくら一緒に馬鹿なことをしても、いくら漠然としていても。
ちゃんと……、進路を見据えて、目標があるから……
モモちゃんは…違う。
「……先生、コレ…頼まれた課題です。」
「ああ、ご苦労様、瀬名。」
………瀬名?!
私たちは、バッと……顔を横に向ける。
プリントの束をもった瀬名くんが…それを、菊地先生へと手渡した。
これまでどんなに懇願したって、偶然会うことすらままならなかったのに…。
どうしてこんな、カッコ悪いとこばっかり……?
「………。俺も…昨日は数学の授業をサボってます。」
「………。……瀬名…?なんだ、急に。」
「説教受けるのはめんどくさいので、今のうちに言わせてもらいますけど…。ケガ人がいたので…少し保健室に。」
セナ…くん?
「ケガ人?」
「はい。……金築ゆな。……この人です。」
……………。
…………?………!!!
って、ちゃんと私が私だってわかってるじゃん!
さっきのあの態度は…なんだったの?!
「そこ。膝の擦過傷が…それです。」
私の膝には…大きな絆創膏。
「足を捻って痛そうだったので…保健室に。」
「…………………。」
「なんでそれを早く言わないんだ、金築。」
「……あ……はい、えーと……。あは、いたたた……。」
いやいや、大分脚色されてますから!
「進路のことで悩みもあったみたいで、ついでに聞いてやって…、おまけにスカートも破れてて……大分迷惑を。」
おい、こら。
庇ってくれる訳じゃないのかー!!
「お前なあ…、最初から正直に言えよ?だからジャージか?瀬名だって優秀と言えど受験生なんだから、負担かけるな。……悪いな、瀬名。ウチの阿呆が。」
「いえ。じゃあ、俺はこれで。」
「おう、ごくろうさん。」
ちらりと……彼の顔を見上げると。
視線が……ぶつかる。
それから、やっぱり彼の方から逸らして。
後は何も言わずに、黙って職員室を…去って行ったのだった。