ジュンアイは、簡単じゃない。
「それで…?何でまた、9組に?」
「聞かないでおくれ、モモさん。」
昼休み…
モモちゃんを引き連れやって来たのは。
9組の……教室の前。
「誰に用?ってか、何その紙袋。プレゼント?……はは~ん、まさか瀬名くんに?」
「滅相もない!私みたいな一般庶民がプレゼントなんて…!!……って、違うわ。今のナシ。」
「…………。いいけどさ、いつまでこうしてんの?」
「だって、敷居が高くて…跨げない!」
「コレじゃストーカーみたいだけど。うろうろうろうろ………」
「……………。」
そうなのだ。
さっきから私たちは……教室の前を、右往左往。
賢そうな生徒たちが、不審がって……こっちを見ている。
「多勢に無勢って言葉知ってる?」
「……なにそれ?」
「私一人引き連れたって、所詮少数部隊。キレ者揃いの大所帯にたちむかったって…どうにもならないっていうことの例えよ。」
「………?つまり……?」
モモちゃんたら、優等生に感化されたの?
随分難しい言葉を…言いなさる。
「つまり、女なら、正々堂々と……サシで行け!!」
どんっと背中を押されて。
9組の教室へと…強制入室。
昼休みにもかかわらず、静かな教室に……
明らかに場違いな生徒が…一人。
「…………。」
肝心なセナくんは、こっちに背を向けて…何やら読書中?!
「………誰かに用?もしかして…瀬名くん?」
私の視線にイチ早く気づいたのは……
よりによって、白川さん。
セナくんとおそらく最も親しいと思われる…女子。
「彼、本読んでるときは周りが見えてないから…呼んできてあげる。」
「………。スミマセン…。」
大人っぽい…。それに…、セナくんをよく知っているかのような…口ぶりだ。
白川さんはそのままセナくんの元へ行くと、
トントン、と肩を叩いて。そっと…耳打ちする。
「……………。」
何か……胸がもやっとする…。
白川さんが、私を指差して…セナくんはゆっくりと…こちらに顔を向ける。
つい思わず、顔が…緩んだ。
すると…どうだろう。
彼はあっさりと視線をそらして。また、本を…読み始める。
「…ちょっ…、無視かよ。」
どこまで腐った根性してんだ!
「………瀬名広斗!!」
「……………。」
「アンタに用あるっていってんでしょ?!」
「……………。」
彼は溜め息をひとつついて。
私の元へと…歩いてくる。
目の前にくると、すごい身長差。
見下されてる感が…半端ない。
「…………。何?」
「………。ええーと……。」
ついでに、威圧感も……半端ない。
「…………。ちょっとついてこい。」
「……は?……え…ええ……?!」
ガッチリと腕を掴まれて、為す術のない私は……
セナくんに引きずられるようにして…廊下へと連れ出された。