ジュンアイは、簡単じゃない。
教室へと戻って来た私は……
窓際に立って。
黙々とスマフォを…、操作する。
「誰かにメールか?妙に哀愁漂ってるけど……。」
「……………。違う。ググってるだけ。」
力は不思議そうに…首を傾げた。
「………。なるほど…。」
画面をみながら、ふう~っと…息を吐く。
『火事場の馬鹿力 』。
彼に指摘されたことが悔しくて…、
意味を、改めて確認しようと……検索。
ことわざのサイトで、その意味は…記載されていた。
「……あいつの言う通り…か。」
ヤツは……天才。間違ったことなど…言うはずもない。
下唇を噛み締めて。悔しさを…堪える。
「……?あいつって?」
「ううん。何でもない。」
立て続けに…もうひとつ。
大して深い意味もなく、つい発してしまった…悪口。
幼稚だとバッサリ切られるのも…納得の上だった。
『どてかぼちゃ』。
「…………あ。」
『それから…役立たずで悪かったな。』
セナくんがあんなことを言ったのは…これか…!
「どてかぼちゃ…。」
「は?!なんだ、突然。俺の悪口か?!」
「昔々……、」
「………?昔話……?いーよ、聞いたるわ!」
「河川敷の土手は誰の土地でもないから、貧しい人であったり、飢饉に備えて…どこの土手にも、南瓜が植えられていたそうな。」
「ほうほう、……それで?」
「どんな土地でも簡単に育ち、手間もかからず…。とんだ楽もできた。しかし、南瓜は陽が当たりすぎると…生長しすぎるわ、割れてしまうやら、使い物にならなくなるという…。それが転じて…『どこにでも転がっている役立たず』の意になったとさ。」
「…………。きん、なんの話?」
「だから…。『どてかぼちゃ』の由来。諸説あるみたいだけど……。」
「………。へー?すごいな、知らんかった。……歴史にでも目覚めたか?」
「……。ううん。ただ…、無知ってそれだで…損してる気がして。」
「……………?」
もう少し…、私に知識があれば。
ちょっとは、太刀打ちできたのかも…しれない。
「お。みてみて、きん!!」
モモちゃんが、私を……手招きする。
「なに~?」
「いやー…、ね。アンタが面白いの調べてるからさ…。私も、調べてみたのさ。これこれ、この意味……。」
モモちゃんのスマフォを…二人で覗く。
「ぶっ……!」
「ウケるっしょ?これ…力にピッタリだと思わない?」
「いやいや、ちょっと失礼じゃない?」
「いっちょ叫んでみますか?スッキリするかもよ?……鬱憤晴らしに。」
「え。言うの?」
「いいから。……せーの……!」
「「おたんこな~~す!!」」
「………。そうです、私がおたんこなすです。…って、だから、なんだっつーの!!」
終止蚊帳の外だった力と、悪戯っ子な顔した…モモちゃんと。
それから……私が揃って。
ただ……笑い飛ばす。
ねえ、セナくん。
あなたは私たちを馬鹿するかもしれないけど……
こんなに可笑しくて、笑い合って、すべてがどうでもよくなるくらいに……
最高に楽しい時間を。
あなたは…きっと、味わったことがないのでしょう?
これが私の……生きる糧になの。
勉強はできない、人の役にもたたない。
そう……、多分どてかぼちゃは……
私にピッタリなのかもしれない。
日が当たっていれば…
どこでだって、図太く生きて行ける。
そんな人生だって……
いいじゃない?