ジュンアイは、簡単じゃない。
「ただいまー……。」
玄関で靴を脱いで。
そう挨拶するけど…
返事が、ない。
「…………?ただいまー…?」
キッチンに顔を出すと。
いつもそこで夕飯を準備している母の姿は…ない。
ガス台の上に置かれた鍋の蓋を開けると……
空っぽ。
いつもなら既に、部屋中にいい匂いが漂っているのに……。
少し、
物寂しい。
「買い物にでもいったかな……?」
自室に向かって、
ギシギシと音を立てる階段を…登っていく。
部屋のドアノブに手をかけて、それからふと……
違和感に気づく。
ちらり、と左となりの部屋に…目をやる。
「……………?」
そのドア付近に、真新しい3段のカラーボックスが…置かれていた。
新しい住居人の為に、準備したのだろう。
黒の味気ないカラーが…それを表していた。
鞄から荷物を取り出して…、
ふううっとためいきを吐く。
手にしているのは……私の、ジャージ。
「いいにおいなのにな……。」
だけど、あんなことを言われた手前……
このままでは、いけないだろう。
「洗い直しますか。」
いいにおいだけど。
セナくんならまだしも…
私には、似合わない。
「ま。身の程知らずでも……チャレンジしたことに、意義がアリ!」
辛気くさくなるのも…似合わないから。
ぐるぐる洗濯機で洗い流して、綺麗さっぱりしてしまおう。
「金太郎は…、熊より強いんだからね!」
お気に入りのくまモンの縫いぐるみに、い~っとして。
洗濯場に向かおうと、ジャージを片手に……
ガチャリ、とドアを開いた。