ジュンアイは、簡単じゃない。
首を傾げる母に、ニッと笑って…
すぐさま、行動にうつす。
女手ひとつで…何でもこなしてきたんだ。
これ以上に、心配性な母を…不安にさせてはいけない。負担をかけては…いけない。
母を布団に寝かせ、大丈夫だからと…念を押すと。
部屋から自分のスマフォを持ち出して…
階下へと、急いだ。
「せなくーん……。」
キッチンに声をかけるも……
返事がない。
まさか……
することしたから……帰った?!
台所のシンクには、水を貯めたペットボトルや鍋が…置いてあった。
「………薄情もの……。」
急激に不安になって。
ぽつりと……そう呟くと。
「誰が薄情だと?」
あさっての方向から…
彼の声。
「風呂に水を貯めに行ってた。ひどい言い様だな。」
「………。ご……、ごめん…。あの、これ…携帯、ありがとう。」
「ん。」
「あの……。」
「……何。」
「私達…同じ機種……。色まで同じ。」
思わず…、顔がニヤける。
「………。新しい機種を買おうと思っていた所だ。ちょうど良かったな。」
むむ……、ちきしょう。
「電力会社に問い合わせてみたら、落雷による停電だそうだ。復旧の目処は立ってないと。」
「そんな……。ご飯もお風呂もまだなのに…。」
「この状況下で、そんな能天気なことを言える頭が羨ましいよ。危機感ってものは…ないのか?」
「………。さっきまでは…、怖くてどうしようかと思ったけど。アンタがいてくれたから……。もう平気みたい。」
「そうか。なら……あとは自分でなんとかしろよ?猿知恵はたらかせて。」
「…え……、行っちゃうの?!」
「誰がずっといるといった?」
「そうだけど……。お母さんが……。」
「え?」
「…………。何でもない。」
自分でなんとかしようって…誓ったばかりじゃない。
馬鹿……、甘え過ぎ。
「………。そういえば…、さっきから姿を見ないな。……母親は……?」
「……………。」
「………?どうか…したのか?」
「ううん。何でもないの、大丈夫。アンタには……関係ない。」
「………。数十分前に言った自分の言葉に…責任ももてないのか?」
「………は?」
「場合によっては…、干渉せざるを得ないんじゃなかったのか?」
「………!」
「逆を言えば…、こっちにもそれを要求しているってことだ。」
「……………。」
「………アンタが世話の焼ける女だってのは…初めからわかってる。そもそも、ここにアンタがいた地点で……嫌な予感はしたんだ。」
「…………。」
「勘違いはするな。アンタの為じゃ…ない。」