ジュンアイは、簡単じゃない。
稲光が…
暗がりを一瞬だけ…明るくする。
根比べするみたいに。
私とセナくんは……向かい合ったまま。
その静寂を破るかのように……、
私の携帯が、けたたましく…なり始めた。
まだ二人…、見つめあったまま。
電話に……出る。
『もしもし…、俺だけど。』
………?!どちらの…『俺』さん?!
知らない…声。
『お前まだ来てないよな?店も停電してて…今日は臨時休業にするって。だから、来なくていーから。』
「………は?店…?……すみませんが、間違えてかけてませんか?」
『…は………?アンタ…誰?』
「金築ですけど。」
『はあ?!金築…ゆな?!』
何でしってんのよ。間違いにしちゃあ、おかしくないか?
「………代われ。」
途端に、セナくんが携帯を奪って…。
私を、ぎろりとにらみつける。
「……ああ、わかった。………は?……そんな訳ないだろ。………………ああ、じゃあ。」
電話をきって。
セナくんは……もう一方のスマフォを、私に差し出した。
「お前のは…そっちだ。わざとか?」
「………?!そ……、そんな訳ないじゃない!暗いから…間違えただけ!」
「お蔭で変な誤解を招く所だった。」
「………すみません……。」
「……で?あとは…何をするといい?バイトは休みになった。少しなら…いてもいい。」
…………。
冷たい奴だと……高を括っていた。
なのに。
なのに…、なんだかんだで、まだ…居てくれるんだ……?
訳が…わかんない。何を考えてるのよ、この人………。
「母が……この騒動で、ぎっくり腰をおこしちゃって…。立ち上がれないの。」
「…………。」
「できれば、母の部屋に…運んで欲しい。」
「…………。わかった。」
「……あと………。」
「まだあるのか?」
「………えっと、セナくん、料理は…得意ですか?」
「…………は……………?」