ジュンアイは、簡単じゃない。
「………………。」
黙々と…食事をとりながら。
私は…ちらり、ちらりと……
目線をあげる。
「……………………。」
目の前に。
同じ釜の飯を食べる…セナくん。
箸使いが……綺麗。
ペンを握るその佇まいに負けず劣らず…
素敵だ。
「ゆな。」
「…………。」
「……ゆーな!」
「ハッ……、何?」
母の声で、ようやっと…我に返る。
「ブラウスにこぼしてる。」
「え……、うわっ…ホントだ!お母さん、布巾取って!」
懸命にシミを拭き取りながら……ちらりと前方に視線を送ると。
予想通りといった所か……
セナくんと、目が合ってしまった。
「ごちそうさまです。」
セナくんは、あっという間に食事を終えて。
先に…席を立った。
「コーヒー入れたけど…、どう?」
「ありがとうございます。…頂きます。」
ナイスアシスト、お母さん!
もう少し、夢見心地で……いられる。
コーヒーがテーブルに置かれると、彼はそれを片手に……
新聞紙を、広げる。
「………。出勤前のサラリーマンかっつーの。」
ぼそっと呟くと。
またしても…、視線がぶつかってしまう。
「ジロジロ見るな。……気が散る。」
「……は~い。」
昨日…、ここに越して来てからというものの。
借りてきた猫のようにおとなしかった彼だけど……。
やはり、口を開けば…
いつものセナくん。
毒吐きは……健在。
「………んん?!」
よくよく見れば。
こちらから見える記事のすべてが……英語で書かれている。
コーヒーに…
英字新聞。
ここに、カリッカリに焼かれたトーストでもあれば……
まるで、英国のブレックファーストみたい…!
ゆらゆらと……コーヒーから上がる湯気が。
より……その情景を、演出する。
「コーヒーは……もちろん、ブラックよね。」
そんな妄想に…浸っていると。
セナくんは、読み始めたばかりのソレを閉じて…
コーヒーを、一気に飲み干してしまった。