眠り姫はひだまりで【番外編】
だけどさゆりに彼氏が出来て、彼に近づく一歩を踏み出す足に縛りがなくなって。
あげく彼女に『頑張って』なんて言われてしまっている、今。
私の足は、やっぱり動けずにいるのだった。
*
そんな私に事件が起こったのは、三月の始めだった。
もうすぐ、一年生が終わるっていう時期の、休日。
学年末のテストも終わって、気が楽になっていた私は、土手で絵を描いていた。
ちゃぽん、とバケツに筆を入れて、伸びをする。
軽いスケッチを終えて、下塗りの途中である絵を見た。
大きな橋と、その下でゆらゆら流れる河と、遠くに見える高い建物と。
そういう、なんでもない素朴な風景を描くのが好き。