眠り姫はひだまりで【番外編】


だけどさゆりに彼氏が出来て、彼に近づく一歩を踏み出す足に縛りがなくなって。

あげく彼女に『頑張って』なんて言われてしまっている、今。


私の足は、やっぱり動けずにいるのだった。






そんな私に事件が起こったのは、三月の始めだった。


もうすぐ、一年生が終わるっていう時期の、休日。

学年末のテストも終わって、気が楽になっていた私は、土手で絵を描いていた。


ちゃぽん、とバケツに筆を入れて、伸びをする。

軽いスケッチを終えて、下塗りの途中である絵を見た。

大きな橋と、その下でゆらゆら流れる河と、遠くに見える高い建物と。

そういう、なんでもない素朴な風景を描くのが好き。


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