眠り姫はひだまりで【番外編】
powerful princess
気付くと目が追うようになっていたのは、高校に入って二度目の六月、中旬だった。
そのふわふわした髪とか、小さな背中だとか、少し高い声だとか。
どことなく『彼女』に似ているあの子を見かけるのは、決まって体育のあとだった。
「あ」
いつもの水曜日の、五限目のあと。
体育館から教室へ戻る途中、同じクラスで仲の良い柚木と、僕は廊下を歩いていた。
声を上げた柚木の目線の先にいたのは、近くを通って行く、ふたりの一年生の女子。
移動教室の帰りなのか、手に教科書を持って、お喋りしながらこちらへ向かってくる。
ここは、一年生の教室がある階だから。
ふたりのうち、背の低い子が僕に気づいた。
…一瞬、ほんの一瞬目が合って。
そして、どちらからともなく目をそらし、僕らはいつものようにすれ違う。
「…はー、やっぱ似てんなぁ、あの子」
隣で柚木が、彼女の後ろ姿を見つめながら、毎度のようにそう言った。
…毎週、この時間にすれ違う一年生のあの子は、よく似ているのだ。