【短編】あなたの隣で目覚められたら。
当たり前のことだけど、ベッドは孝二くんの匂いがして、ちょっとどきどきした。
普段から思っていたことだけれど、孝二くんはいつもいい香りがする。
自然な、心が安らぐいい香りで。
きっと柔軟剤とか使っている石鹸とかの香りだと思うのだけれど、部屋に来たら余計にその香りが感じられた。
何どきどきしてるんだ、私。
セミダブルのベッドに入って、なるべく孝二くんの邪魔にならないように隅っこの方で寝ようとしていると、孝二くんが
「どうしてそんな端っこにいるんですか。落ちちゃいますよ。」
と言ったかと思うと、
もっとこっちに来てください
といいながら、背中から私を抱き寄せた。
「…きゃ、ちょっと。」
すっぽり後ろから抱き締められ、身体が密着する形になった。
…いくらなんでもこの体制はやばいでしょ。
高身長で程よく筋肉の付いている身体に抱き締められて、私の心臓は痛いくらい激しく動いていた。
「おやすみなさい、香織さん。」
「お…、おやすみ」
本当にこのまま寝るの?
絡み付いた孝二くんの腕が、胸の近くにあって、激しい鼓動が伝わってしまわないか、心配になった。
初めは絶対に眠れないと思っていたものの、アルコールや仕事の疲れのせいで、いつの間にか私もうとうとし始めた。
頭上からは、孝二くんの寝息が聞こえる。
あぁ…私、何やってるのかな。
そう思いながら、私も眠りについた。