《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「そうか? そういえばリーナは王宮で元気にしてるのか? あいつ、そそっかしいから…」

「相変わらず妹想いだな。リーナは姉上の侍女に復帰したよ。午後、会いに行く予定だけどジュリも行く?」

「……いや。会いたいのは山々なんだけど、俺は近いうちに試験があるから無理だな」

 ───この国営警備隊の訓練所は定期に希望者を募り、警備隊の見習や厳しい訓練を重ねた熟練の古参兵までもが寝泊まりの出来る大きな施設となっている。腕の立つものは厳しい試験や様々な審査等を経て、王宮警備や国境警備の任務を任せられる。

「俺、この試験に通れば 収穫祭(リコルト・フェスト)迄には王宮警備隊の職に就けるぜ。多分楽勝!」

 端から見れば随分と自身を過信しているように聞こえるが、ジュリアンの腕は確かだ。父親は国境警備隊の隊長を勤めており、ジュリアンも既にその頭角を現している。

「頼もしいな。王宮警備隊はずっとジュリの目標だったもんな! 早く合格してリーナの事を安心させてやれよ」

「分かってるさ、お前こそリーナの事を困らせたりしてねえだろうな…! てゆうか、またそんなどっかの旅人みたいな格好で来たのか? 視察ならもう少し王子らしい服装とかあるだろ……アーサ殿下!」
< 104 / 529 >

この作品をシェア

pagetop