《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ラインアーサは額に手を当て一息ついた。

「ライア、そんなに急に事を進めなくても。この件は陛下も対策されてますから」

「でも困っている民がいるなら、一日でも早く対策を取らないと。俺、旧市街には知り合いがいるしまた協力してもらうよ……」

 その後、視察隊には先に王宮に戻って貰いラインアーサ一行はハリとジュリアンの男三人で街を散策する事になった。何やらジュリアンがリーナに土産を買うのだとか。
 流石に男三人で街を歩いているとかなり目立つらしく、街娘たちが甲高い声を上げて騒ぎ立てている。ラインアーサもハリも普段なら素通りなのだが先程からそれに応え、笑顔で手を振り返している者が一人。ジュリアンはだいぶお調子者だ。

「……ジュリ。お前、何しに来たんだよ」

「まあまあ、俺普段昼間はあんまり街に来ないからさ! それにお前だって帰国の馬車行進(ディスフィーレ)の時は同じ様にしてんの見てたぜ!」

「あ、あれは不可抗力だろ…!?」

「へえ。お! あの子可愛いな!」

「あの、お二人とも。私は先に戻っても宜しいでしょうか? 流石に男三人での買い物は……ちょっと、どうかと」

 ハリがだいぶ、いやかなり冷めた顔でラインアーサとジュリアンを交互に見つめる。
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