《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ラインアーサは大きな溜め息を落とすと、絡まれている女性を助ける為にその路地へと侵入した。

「ねえ、お兄さんたち何してるの? か弱い女性に大の男が二人掛かりでさ」

 そう声を上げながら路地の奥に足を踏み入れるも、その場面に目を疑った。

「っ…スズ、ラン!?」

 あろう事かスズランが路地裏の冷たい壁に押し付けられ、迫られている。両手首を掴まれ縫いとめられた蝶のごとく身動きも取れず、それでも気丈に男を睨み返している。しかし、その瞳にはやはり涙が滲んでいた。その光景が目に入るやいなや頭に血が上り激しい感情が沸き起こった。ほぼ無意識にスズランの元へと足が動いていた。

「! っ…ライ、ア…?」

 突然の状況に驚いた表情でラインアーサを見つめ返すスズラン。

「何だァア!? 誰だてめぇ、オレらの邪魔するんじゃあねぇよっ!!」

 いかにも街の粗暴者と言った風貌の見張り役の男がラインアーサに向かって大声で威嚇してくるが、男を無視してスズランを拘束してる方の男を鋭く睨みつけた。

「手、離せよ…」

「あァ? 兄ちゃん今何か言ったか? おい、エヴラール!! こいつを路地の外に追い出せ! 俺は今この女とイイ所なんだからよォ」
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