《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 男が品のない笑みを浮かべながらスズランに顔を近づける。

「っぃや…! やめて!」

 スズランの怯えた顔を見てラインアーサの理性は吹き飛んだ。

「離せ…」

 低く唸る様に告げながら、先程よりも鋭い眼光を男に向ける。

「ハぁあ? 何言ってんだコイツ。兄貴の邪魔しない方が身の為だぜぇ!? 痛い目に会いたくなかったらさっさと失せな小僧!」

「それはこっちの台詞だ」

「おい! エヴラール、何もたついてる? 早くこの男を追い返せ! これじゃあ楽しめねえじゃあねぇ、か?」

 ラインアーサはスズランの手首を拘束している男の腕を容赦なく掴み上げた。

「なっ…何なんだてめぇ!? っつ!? 離せ……う、腕がっ、折れちまう!」

 男が怯んで手の力を抜いたその隙に、スズランを自分の方へと引き寄せる。

「ラ、ライア…!」

 スズランの安堵した様な顔に少し冷静さを取り戻すが、目の前の男が激昂してラインアーサに食って掛かってきた。

「貴様ァ! 俺の獲物を横取りする気か?」

 腕の痛みを摩りながら凄む男を軽く往なす。

「この野郎ッ! ジェローム兄貴の楽しみを邪魔するとどうなるか、思い知らせてやるぜぇっ!!」
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