《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「ちくしょう、、兄貴の手柄をっ! 野郎っ…覚えてろよっっ!!」
手柄……?
手柄とは一体何を意味しているのか──。
下っ端の男が吐き捨てる様にそう言い残し、二人は路地裏から足早に去って行った。
ラインアーサは後ろで身を竦ませ怯えるスズランの肩を引き寄せ何も言わずに宥めた。小刻みに震えていたスズランだったが、そうしているうち徐々に落ち着いてくる。同時に昂ぶっていたラインアーサの感情も冷静さを取り戻す。
あのまま怒りに身を任せていたら、恐らく殴りかかっていただろう。この国の王子という立場からして、例え粗暴者であれ民には危害を加えたくないという信条がある。しかしあれ以上スズランに危機が迫っていたら自制する事は出来ただろうか。答えは否、だ。もし少しでも気付くのが遅れていたら……と思うと怖かった。それと同じくらい別の怒りが込み上げてくる。
「……あの、わたし…。もう大丈夫だから。……あ、ありが…」
「何が大丈夫だ!! 何故こんな所に一人で居る? あいつはどうしたんだよ、セィシェルは…! あいつと一緒じゃあないのか?」
ラインアーサはそう一気に捲し立て、思わずスズランの言葉を遮ってしまった。
手柄……?
手柄とは一体何を意味しているのか──。
下っ端の男が吐き捨てる様にそう言い残し、二人は路地裏から足早に去って行った。
ラインアーサは後ろで身を竦ませ怯えるスズランの肩を引き寄せ何も言わずに宥めた。小刻みに震えていたスズランだったが、そうしているうち徐々に落ち着いてくる。同時に昂ぶっていたラインアーサの感情も冷静さを取り戻す。
あのまま怒りに身を任せていたら、恐らく殴りかかっていただろう。この国の王子という立場からして、例え粗暴者であれ民には危害を加えたくないという信条がある。しかしあれ以上スズランに危機が迫っていたら自制する事は出来ただろうか。答えは否、だ。もし少しでも気付くのが遅れていたら……と思うと怖かった。それと同じくらい別の怒りが込み上げてくる。
「……あの、わたし…。もう大丈夫だから。……あ、ありが…」
「何が大丈夫だ!! 何故こんな所に一人で居る? あいつはどうしたんだよ、セィシェルは…! あいつと一緒じゃあないのか?」
ラインアーサはそう一気に捲し立て、思わずスズランの言葉を遮ってしまった。