《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「ジュリアンと申します! 今日は非番ですが、この街の皆さんの平和と安全をお護りしております。お嬢さん、お怪我はありませんでしたか?」

 ジュリアンはいかにもな気障ったらしい仕草で、警備隊の記章を見せ自己紹介を始める。スズランを見るなり急に生き生きとし出したジュリアンに対し、ラインアーサはあからさまに眉を潜めた。

「おい。ジュリ! 何で突然割って入ってくるんだよ」

「だって、この子めちゃくちゃ美人な上に超可愛いじゃん! ちゃんと自己紹介しとかないと俺の気が済まないぜ! で、お前こそ何処でこんな可愛い子と知り合ったんだ?」

「……ああ、王宮の近くに Fruto del amor(愛の果実)っていう酒場(バル)があるだろ? その店の店員だ」

「……あ、スズランと言います。警備隊の方なんですね、助けていただいてありがとうございます」

 そう言いながらスズランが深々と頭を下げた。そんな自己紹介ラインアーサの時には無かったではないか。そもそも助けたのはジュリアンでは無いのだが。ラインアーサの機嫌が一気に悪くなる。一方で能天気な態度のジュリアン。

「そっかぁ、スズランちゃんね! 俺も今度その酒場(バル)に行くからおまけしてね〜」

「あ、はい!」
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