《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 そう早口で言うと、スズランは酒場(バル)の裏口へと走って行ってしまった。
 自身のしてしまった事にはっと我に返るも後の祭りだ。

「……本当、っ馬鹿か俺は…! ああ、もう」

 スズランが建物の中に入ったのを確認し、ラインアーサもその場を離れる事にした。
 無事に送り届ける事は出来たが、ラインアーサは絶賛嫌われ中だ……。嫌われて当然の行為をスズランにしてしまった。というか当たり前だがますます怒らせてしまった。
 だが、からかったわけではない。
 愛おしく思って口づけをしたのは本当だ。
 しかし〝馬鹿〟はまだしも〝大嫌い〟というのはこんなにも堪えるものなのか。いや、どう考えても自業自得なのだが。
 そんな事を考えながら、ラインアーサは森を通り抜け大人しく王宮へと戻る事にした───。

< 124 / 529 >

この作品をシェア

pagetop