《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 腰を落として(うやうや)しく頭を垂れるリーナ。
 兄のジュリアンと良く似た容姿で、焦茶で癖のある髪と明るい緑の瞳。いつも笑顔が絶えない娘なのだが、目の前のリーナは伏し目がちでほんの少し元気の無い表情に思える。
 幼い頃からラインアーサを兄の様に慕っており、七つの時にイリアーナ専属の侍女見習いとして宮中へ上がった。イリアーナが行方不明になった時は、彼女もとても心を痛めていた。

「はい! こうしてまたイリア様に仕える日が来ればと、これまでおじい様に色々な煌像術(ルキュアス)の使い方を指南(しなん)して頂きました。今後はイリア様の護衛だって任せてください!」

「それは頼もしいよ。いや、それにしても久しぶりだよな。見ない間リーナもだいぶ大人っぽくなったんだな! 最後に会ったのはリーナが十六の時だったかな」

「そ、そんなっ! アーサ様こそなんだかますます……その、(たくま)しくなられたというか…」

「そうかな?」

 リーナが頬を赤く染めて俯いた。その様子に何故かイリアーナが嬉しそうにお節介を焼く。

「あらあら、あなた達って案外お似合いじゃあないかしら?」

「イ、イリア様!? 何を仰るのです! あたしはそんなっ!!」

 リーナはますます顔を赤く染めて焦り出す。
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