《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
翌朝。
ジュリアンは王宮内の自宅に泊まったらしく、朝一番で挨拶しにやってきた。
朝から羨ましい程無駄に元気の良いジュリアンとは正反対のラインアーサ。起き抜けの冴えない思考力のままライオネルの元に赴き、ジュリアンの助言も借りつつ〝旧市街の粗暴者達が及ぼす被害を懸念し、彼らを駆逐せざるを得ない〟とライオネルに報告した。
既に昨日ハリから大まかな報告は受けていたライオネル。微かに眉間に皺を寄せたのはより詳細な情報に思う所があってなのか。
「───未だ無法者が蔓延って居ることは以前から定期的に報告を受け、対策してきたものの…。最近はより頻繁になって来ている様だね」
「……父上。昨日も善良な民が被害に遭っている。俺は一度、旧市街に降りて実質的な被害がどの程度のものなのか調べに行くつもりだ」
ラインアーサが自身の思案を述べると、ライオネルは小さく肩を竦め諦めた様に小さく息を吐いた。
「……その際は一人で行動せず、ジュリ君にも同行してもらいなさい。どうせアーサは止めても聞かないのだろう?」
「大丈夫だよ、ハリだって居るんだし。だけど男三人で行動するのは妙に目立つと言うか…」