《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 溜息と共にこぼした小さな愚痴をこぼしたジュリアンに、ふと彼の父親の顔を思い浮かべた。

「グレィスは国境警備隊の隊長だもんな。なかなか帰って来られないのは国の為とは言え、気が咎めるよ」

「いいんだ。そんな親父だけど尊敬してる。でも俺はリーナや母さんを近くで守る為に、王宮警備隊に着きたいんだ! 仕えるのはもちろんお前だけどな、アーサ殿下」

 真面目に語った事が気恥ずかしいのか語尾を茶化すジュリアン。

「ジュリ…。昨日はリーナやサリーと、家族水入らずで過ごせたみたいだな」

 少々感傷的な雰囲気に浸ってそう返したのだが、少し先を歩いていたジュリアンはふと我に返った様にくるりとこちらを振り向いた。

「……ああ。何故かジュストじい様と母さんに俺の夜遊びがバレててさ、それはもう大目玉を食らったぜ! リーナにまで変な目で見られるし!! アーサ、まさかお前がバラしたんじゃあないよな?」

 ジュリアンが疑いの眼差しでこちらを見つめてくる。

「はあ!? 違うって! そんな事するわけないだろ。ジュリの自業自得だ。それにジュストベルの目は誤魔化せないからな」

「確かに。そうか、今後はもっと上手くやらないと駄目だな」
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