《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 案外素直に引き下がったかと思うと、そう呟いたジュリアンに流石のラインアーサも呆れる。

「そう言えばさ、アーサ。お前さえよかったら……リーナとの事、本気で考えてみてくれよ。あいつ、お前の事を小さい頃からずっと慕ってるって言うかさ。兄としてもお前とそうなってくれたら嬉しいって言うか…」

 ジュリアンが言わんとしている事は解る。
 ラインアーサ自身も、一時は同じことを考えた事があった。しかしいくら思い直そうとしても、やはりリーナには家族以上の感情が持てなかったのだ。
 ラインアーサは国を出てからも、自分の求める条件に見合う女性を密かに探していた。
 身分や地位で人を差別する事なく、人の上に立つという立場でも公平かつ冷静な判断が出来る女性。それを家族の様に思っているリーナに求めるのは何か違う気がする。
 必然的に自分よりも年上の女性に目を向けていたのだが、なかなか見つからないものだ。

「……」

「どうした? さっきから黙りこくって。ふふふ……やっぱりな!」

「な、何だよ…」

「わかってるさ、お前はあのスズランって子が気になるんだろ?」

 唐突にスズランの名が出て来てラインアーサはあからさまに狼狽(うろた)えた。
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