《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
〝警備員〟としてのラインアーサには懐いてくれているのだから、自分の衝動を満たす為にこれ以上傷付けるのも、嫌われるのも望ましくはない。
ざわめく風に想いを馳せながら、ラインアーサは瞳を伏せる。
「うん? ……おい、誰か来たぜ」
「!!」
ジュリアンの声に、ラインアーサの心臓が跳ねた。この立入禁止区域の森に堂々と入って来る人物など決まっている。
「俺、ちょっと注意してやるよ。未来の王宮警備隊員をなめんなよっと!」
「おい待てよ、ジュリ…っ」
ラインアーサの制止も虚しく、ジュリアンは樹の幹から颯爽と飛び降りて行ってしまう。
予想通り、酒場の方面から歩いて来たのはスズランだった。
スズランの姿を確認するなり、ラインアーサは心臓を強く掴まれた様な感覚に陥った。ジュリアンの様に飛び出して行けない自身へ苛立ちを覚えるも、ラインアーサはそのまま樹の上で息を潜める。
「待てそこの曲者! この森を王宮の敷地と知って足を踏み入…ってあれ? 君、スズランちゃん!?」
「きゃあっ?! ……だ、誰?」
「……え、あっれ〜? もう忘れちゃった?? 俺ちょっと落ち込んじゃうな〜」
ざわめく風に想いを馳せながら、ラインアーサは瞳を伏せる。
「うん? ……おい、誰か来たぜ」
「!!」
ジュリアンの声に、ラインアーサの心臓が跳ねた。この立入禁止区域の森に堂々と入って来る人物など決まっている。
「俺、ちょっと注意してやるよ。未来の王宮警備隊員をなめんなよっと!」
「おい待てよ、ジュリ…っ」
ラインアーサの制止も虚しく、ジュリアンは樹の幹から颯爽と飛び降りて行ってしまう。
予想通り、酒場の方面から歩いて来たのはスズランだった。
スズランの姿を確認するなり、ラインアーサは心臓を強く掴まれた様な感覚に陥った。ジュリアンの様に飛び出して行けない自身へ苛立ちを覚えるも、ラインアーサはそのまま樹の上で息を潜める。
「待てそこの曲者! この森を王宮の敷地と知って足を踏み入…ってあれ? 君、スズランちゃん!?」
「きゃあっ?! ……だ、誰?」
「……え、あっれ〜? もう忘れちゃった?? 俺ちょっと落ち込んじゃうな〜」