《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ジュリアンとスズランのやり取りを、固唾(かたづ)を飲む様な気持ちで見守るラインアーサ。

「あれ…。でもこの森に警備隊って配属されてたっけかな? スズランちゃんその警備員の名前とかわかるかな。良かったら渡しといてあげるよ、そのマント」

「あ……名前、わからないんです。警備隊の規則で教えられないそうで。顔も夜で薄暗くてちゃんとは……あ! でも背が高くて、優しくて…」

「え? 警備隊にそんな規則無いけど? 現に俺はスズランちゃんに堂々と名乗ってるじゃん!」

「そういえば、そうですね! じゃあ、なんであの警備さんは名前…」

 望ましくない話の流れにラインアーサは焦って居た。あの時咄嗟についた嘘がここで裏目に出てしまうなんて。
 狼狽えるラインアーサとは対照的に、ジュリアンは落ち着き払った様子でゆっくりと頷いた。

「……ははーん。わかったぜ! スズランちゃん。その警備員さ、俺のよーく知った奴だと思う」

「え! ほんとう? もし良かったらその人の名前、わたしに教えてください」

「ん〜……名前ねぇ」

 ジュリアンが勿体つけながらちらりと視線をラインアーサに寄越してくる。

(ああジュリ……頼むから余計な事は言うなよ!)
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