《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
街のほぼ中心部に建てられている時計塔が午後一番の時を告げたのだ。
「げ! もうそんな時間か!? 午後の号令かかっちまう! 悪い、アーサ。俺もう行くぜ」
「余計な事するからだ、お前なんて遅刻すればいい」
ラインアーサそう言い捨て、王宮へと踵を返そうとしたがジュリアンに呼び止められる。
「ちょっと待てって! ほらこれ。スズランちゃんから預かったマントとあと、旧市街に行く日取りが決まったら連絡しろよ? 俺だって一応お前のこと陛下に頼まれてるんだからな! ……じゃあ!!」
そう早口で言い終えるや否やラインアーサの腕にマントを押し付け、ジュリアンは脱兎の如く森を飛び出して行った。
「ジュリの奴……頼りになるのか、ならないのか。余計な事しやがって」
受け取ったマントを広げると、スズランから移ったのか僅かに甘い香りが広がりラインアーサの心を乱すには充分だった。しかしラインアーサはマントを羽織らずにたたみ直す。
「俺には俺のやるべき事が……か」
色恋にうつつを抜かしている訳にはいかないと自分に言い聞かせる。
それからラインアーサは公務に終われる日々を過ごし、敢えてこの森へ足を運ぶ事はしなかった。
「げ! もうそんな時間か!? 午後の号令かかっちまう! 悪い、アーサ。俺もう行くぜ」
「余計な事するからだ、お前なんて遅刻すればいい」
ラインアーサそう言い捨て、王宮へと踵を返そうとしたがジュリアンに呼び止められる。
「ちょっと待てって! ほらこれ。スズランちゃんから預かったマントとあと、旧市街に行く日取りが決まったら連絡しろよ? 俺だって一応お前のこと陛下に頼まれてるんだからな! ……じゃあ!!」
そう早口で言い終えるや否やラインアーサの腕にマントを押し付け、ジュリアンは脱兎の如く森を飛び出して行った。
「ジュリの奴……頼りになるのか、ならないのか。余計な事しやがって」
受け取ったマントを広げると、スズランから移ったのか僅かに甘い香りが広がりラインアーサの心を乱すには充分だった。しかしラインアーサはマントを羽織らずにたたみ直す。
「俺には俺のやるべき事が……か」
色恋にうつつを抜かしている訳にはいかないと自分に言い聞かせる。
それからラインアーサは公務に終われる日々を過ごし、敢えてこの森へ足を運ぶ事はしなかった。