《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
そう言いながらハリが僅かに微笑んだ様に見えた。それもまた珍しい事だ。
───今日のハリはやけに表情豊かだった様に思えた。それに何時もより、会話も口数も多い様に感じるのは気の所為ではない筈だ。ハリの表情が豊かになるのは、当然ながらラインアーサにとってとても喜ばしい事だ。
「少しづつでもいい。ハリの記憶が戻るのなら俺は何だって…」
ラインアーサは記憶が無いままのハリに、自身の側近の仕事を強いてきた事がずっと気掛かりでならなかったのだ。何でも卒なくこなすハリにいつか恩返しが出来たらと思っている。
そんな面持ちで BAR・Fruto del amor の入り口の前でとある人物を待ち伏せした。
週末で何時もより人の流れが多い。だが、待てども待てども目的の人物は現れない。開店前から入店客をさりげなく観察していたつもりだが、考え事をしていて見逃しただろうか。確認の為仕方なく酒場の中へ入る事にした。
「もうここに来るつもりは無かったんだけどな。やむを得ないか…」
一度決めた事を覆す様で気が進まないが、入り口の扉を開け石段を一段づつ降りてゆく。
───今日のハリはやけに表情豊かだった様に思えた。それに何時もより、会話も口数も多い様に感じるのは気の所為ではない筈だ。ハリの表情が豊かになるのは、当然ながらラインアーサにとってとても喜ばしい事だ。
「少しづつでもいい。ハリの記憶が戻るのなら俺は何だって…」
ラインアーサは記憶が無いままのハリに、自身の側近の仕事を強いてきた事がずっと気掛かりでならなかったのだ。何でも卒なくこなすハリにいつか恩返しが出来たらと思っている。
そんな面持ちで BAR・Fruto del amor の入り口の前でとある人物を待ち伏せした。
週末で何時もより人の流れが多い。だが、待てども待てども目的の人物は現れない。開店前から入店客をさりげなく観察していたつもりだが、考え事をしていて見逃しただろうか。確認の為仕方なく酒場の中へ入る事にした。
「もうここに来るつもりは無かったんだけどな。やむを得ないか…」
一度決めた事を覆す様で気が進まないが、入り口の扉を開け石段を一段づつ降りてゆく。