《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 既に賑わい始めた週末の店内は活気があり、外との寒暖差にほっとする。
 この人々の活気が好きだ。民の暖かさが伝わってくる様な感じがラインアーサの心を弾ませる。しかし、今回は別の目的で此処へ来ている為気を引き締めた。
 楽しそうに酒や食事を楽しむ客を横目に店内を見渡すものの、やはり目的の人物は見当たらない。同時にスズランの姿がない事に安堵したが、少し残念のような複雑な気持ちになった。

「……居ない、か」

 目的の人物とは、エリィの事である。
 ラインアーサが毎日通っていた頃は、彼女も常連の如く当たり前に姿を見かけたものだが。

「此処に居ないのなら別の店か? それとも…」

 捜すのを諦め酒場(バル)を出ようと出入り口に戻ろうした時、ちょうど華やかな女性達が三人程入店して来たのが目に入った。
 確か、エリィの知り合いだったと記憶している。案の定、女性たちはラインアーサを見つけるなり駆け寄ってくる。

「あらぁ! ライアじゃない! 久しぶりね。ここ暫く見なかったからもう会えないのかと思ってたのよ? ねぇねぇ。良かったら奥の席であたし達に付き合わない? また色んな国のお話をたくさん聞かせてほしいわ!」
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