《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「あらまあぁ! せっかくライアの方から会いに来てくれたのに! なんかね、あの子ったらこの間そろそろ国に帰るとか言ってたのよね」

 国に、帰る? 今帰られては非常に困る。
 これは(ほとん)ど直感なのだがエリィは他国の、それもルゥアンダ帝国の情報を持っているとラインアーサは踏んでいた。もしそれがどんなに些細な事だったとしても、ハリの為に成り得る情報は収集しておきたい。

「あの子、もしかしたら週明けあたりにこの国を発つかも知れないわよ。良かったら探してお別れの挨拶でもしてあげて?」

「そうなのか。じゃあここの他にエリィが行きそうな店、もし心当たりあるなら教えてくれると助かるんだが…」

「そうねぇ、ここからすぐ近くの果実酒が売りの軽食屋とかかしら。あ、南側にある崖の上の酒場(バル)とかにも良く行くって話してたわ!」

 どちらもそこそこの人気店だ。ラインアーサも何度か足を運んだことがある為、場所は分かる。

「教えてくれてありがとう! 早速行ってみるよ。ティルダ、君たちに会えて良かった」

 ラインアーサはティルダの手を取り、にっこりと微笑んだ。実際ここで彼女らに会わなかったら今日は諦めて帰っていたかもしれない。
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