《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「何それ。それだけの理由で? あたしはよくマルティーン帝国出身と間違われる位、自分でもルゥアンダ人らしくない見た目だと思うのに。まあ実際、半分はマルティーン人の血が入ってるから当たり前なんだけどね」

「……俺は内乱で離れ離れになった家族を捜して各国を旅して来たんだ。マルティーン帝国にも滞在したことがあるが、エリィはやっぱりルゥアンダ人寄りだと思う」

 そう指摘すると何処かエリィの表情が少し曇った様に感じたが、すぐにいつもの明るい調子に戻った。

「そう……で、あたしがルゥアンダ帝国出身だったらなんだって言うのよ?」

「エリィは国に帰るって言ったよな? ルゥアンダ帝国は内乱後から現在も鎖国状態の筈だ。どうやって入国するつもりなんだ? もし、方法があるなら俺にも教えてほしいんだ!」

 誰もいない戸外(テラス)席にラインアーサの声が響いた。

「……何の為に? ……ていうか無理よ。ライア、だって貴方は魔像術(ディアロス)を使えないでしょ?」

魔像術(ディアロス)…? 煌像術(ルキュアス)のことか?」

 魔像術(ディアロス)───。
 聞いたことがない訳では無いが…。

「そうよ。この国ではこっちの言い方には全く馴染みが無いみたいね」

「君は本当に何者なんだよ…。何の為にこの国に来たんだ?」
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